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会社役員が会社からお金を借りる役員貸付金とは?メリット、デメリットを紹介

「子供の学費がどうしても足りなくなった」

「接待費用が役員報酬以上に掛かってしまった」

そういった状況の中で、会社役員の方は「役員貸付金の利用」を検討している方も多いでしょう。

また中小零細企業の社長などは、会社の資産と個人の資金を分けていない人も多いですが、役員と会社の資産を分けておかないと後々税務問題に発展します。

今まで知らなかったという方は「役員貸付金とは?」から、役員貸付金を利用するメリット・デメリットをここで学んでいきましょう。

役員貸付金の利用を検討している方は、ぜひ参考にしてください!

役員貸付金とはなにか?

そもそも役員貸付金とは「法人から役員個人に対して貸し付けられるお金」のことで、役員貸付金が発生するケースは以下になります。

★一時的な役員報酬としての支払い
★法人から引き出した資金を個人利用する際の費用
★領収書が使えない場合の資金用途

なお決算書において「役員貸付金」といった科目がある訳ではなく、一般的には短期貸付金などの中に含まれているケースが多いです。

ただし確定申告の際に、税務署へ提出する勘定科目内訳説明書には記載が必要になるため、科目の有無は大きな問題ではありません。

役員貸付金のメリットを解説!

役員貸付金のメリットとしてはさきほど説明した通り、一時的な役員報酬として利用できる点が挙げられます。

役員報酬は、以下の条件を全て満たしていなければ「損金不算入科目」になるので、簡単に支払うことができません。

★定額かつ同額の給与であること
★事前確定届出が提出されていること
★過大でないこと

一方「役員貸付金」ならば上記の制限を受けることなく、会社の資産から役員へ資本を移動させることが可能です。

そのため中小零細企業などは、役員報酬を抑えて役員貸付金で計上するといったことが多く行われています。

役員貸付金のデメリットを解説!

ここまでは役員貸付金を利用するメリットを解説してきましたが、当然デメリットも存在します。

特に役員貸付金に関してはメリットよりもデメリットの方が多く、利用前には注意が必要です。

詳しくは次から見ていきましょう。

会社の資本金が減る

役員貸付金の最大のデメリットは会社の資本金が減っているという点です。

先ほども説明した通り、役員貸付金という形をとれば、会社の経理から役員へ無制限にお金を流すことができます。

そのため、毎月数十万円から数百万円のお金が会社から役員に流れているケースも多いです。

特に経理や財務の知識がない役員などは、役員貸付金を返済しない・返済金に利子をつけないといった場合も少なくありません。

そうなれば役員の個人的な出費のために会社の資本金が減り続け、会社の存続に悪影響が生じることもあるでしょう

金融機関からの評価が下がる

役員貸付金を利用する最大のデメリットとしては、金融機関からの評価の悪化でしょう。

金融機関は会社のバランスシートなどを元に審査をおこなっています。

しかし、その際に多くの役員貸付金が計上されているといった疑惑をもたれます。

「会社に融資をしても役員にお金が流れるだけではないか」

「違う会社への迂回融資に利用されるのではないか」

また、銀行によっては「役員貸付金を完済してから審査に申し込んでください」と融資自体を断られる可能性もあるでしょう。

役員貸付金は非常に便利な制度の1つですが、利用する際にはなるべく早期の返済をオススメします。

利息の計上で法人税の負担が増える

会社というのは営利組織であるため、全ての行動は営利活動でなければなりません。

つまり役員へお金を貸し付ける際にも利息を付ける必要があるのですが、多くの役員は利子を払わず完済処理されているのが現実です。

また役員貸付金が長期に渡って返済されない場合、返済の意思がないと判断され、全額が役員報酬に変更されることが多いです。

法人税の負担を増やさないためにも、役員貸付金の利用はなるべく避けた方が良いでしょう。

債権放棄をすると法人税の負担が増える

役員貸付金が完済できないなどの理由で債権を放棄すると、税法上では役員の報酬になります。

そうなれば役員報酬は費用として計上することができないため、法人税が増額されることでしょう。

相続人に債務として相続される

役員貸付金とは、経営者からすれば借金に他なりません。

そのため経営者が亡くなり、会社を相続した場合は、そのまま債務として引き継がれるのです。

役員貸付金の利用は問題ありませんが、借金であるという自覚をもちましょう。

役員貸付金を利用した際の利息を解説!

最初に説明した通り、役員貸付金は会社が役員へお金を貸しているため、基本的には利息を付ける必要があります。

役員貸付金を利用した場合の利息は以下の通りです。

会社が他から借り入れて役員へ貸し付けた場合 その借入金の利率
平成22年から25年中に会社から役員へ貸し付けた場合 4.3%
平成26年中に会社から役員へ貸し付けた場合 1.9%
平成27年から28年中に会社から役員へ貸し付けた場合 1.8%
平成29年中に会社から役員へ貸し付けた場合 1.7%
平成30年から令和2年中に会社から役員へ貸し付けた場合 1.6%

参考:No.2606 金銭を貸し付けたとき

すでに無利息で役員貸付金を返済していた場合は、差額分が給与として課税されることになります。

役員貸付金が給与として課税されないケースを紹介!

下記に当てはまる場合は、無利息または法定利息よりも低い利息で役員貸付金を計上していたとしても、課税の対象になりません。

★災害や病気などが原因で生活資金を借りるために、合理的な金額や返済期間で役員貸付金を利用した場合
★会社における借入金の平均調整金利など合理的な貸付利率で、役員貸付金を利用した場合

また上記以外でも、法定利率によって算出された利息と実際に支払われた利息が年間で5,000円以下の場合も課税対象外になります。

無利息で役員貸付金を処理していた場合は、上記の法定利率に従って一度計算し直してみましょう。

役員貸付金の消し方を解説!どうやって返済すれば良い?

ここまで役員貸付金のメリットやデメリットを解説してきましたが、デメリットの方が強いことが分かりますね。

そのため現在役員貸付金を利用している人や、役員貸付金の利用を検討している人などは、役員貸付金の返済方法について確認しておきましょう。

具体的な返済方法としては、以下などが挙げられます。

★役員報酬から返済する
★貸倒の処理をする
★個人資産を売却する
★生命保険を担保にする
★個人的に借入れる
★役員を退職する
★役員貸付金精算プログラムを利用する

詳しくは次から見ていきましょう。

役員報酬から返済していく

役員貸付金を解消するにあたって、最も無難な方法が役員報酬からの返済が挙げられます。

役員貸付金が高額になっている場合は、毎月の手取りから少しずつ返済していく形になるでしょう。

なおその際は、役員報酬を上げつつ返済を促すと役員からの反発を抑えられます。

ただし、役員報酬を変更する際には以下の点に注意しましょう。

★役員報酬額は事業年度の3ヶ月以内に変更する必要がある
★役員個人の税負担(所得税・住民税・社会保険料など)が増える

貸倒の処理をする

現在計上している役員貸付金の返済が難しいほど高額になっている場合は、貸倒処理をするのも1つの選択肢です。

しかし1人の役員が利用している役員貸付金を貸倒処理するためには、他の役員の同意が必要になります。

放棄した額はそのまま役員賞与として扱われるので、役員個人の税負担が増すことは理解しておきましょう。

また会社側としても貸倒処理をした場合は、損金不算入で税金が発生するため注意して下さい。

【損金不算入とは?】
損金不算入とは会計上は費用になるが、財務上では損金に当てはまらないお金のこと。

役員報酬以外にも交際費や寄付金、同族会社と経営者の取引などが該当する。

なお役員貸付金を貸倒処理するためには、税務上いくつかの要件をクリアしなければならないため、処理をする際には税理士へ相談することをオススメします。

個人資産を売却する

役員個人に不動産などの財産があれば、売却の後に返済に充てるのも良いでしょう。

ただし、売却によって利益が出た場合は役員個人に税負担が発生しますし、不動産を売却した場合は会社側に不動産取得税などの諸費用が発生します。

そのため「この不動産は時価総額○万円だから○万円分の役員貸付金と相殺できる」と単純に考えるのではなく、しっかりと財産の移動にかかる経費を計算しておくことが大切です。

個人的に借入れる

あまり推奨できる方法ではありませんが、役員が個人的な借入をして精算をするのも1つの手段です。

当然ですが役員は負債を抱えてしまいますし、元々は会社のお金を他社で借りていることになるため、会社の資本金自体は減っています。

なるべく避けた方が良い対処法と言えるでしょう。

役員を退職する

役員貸付金が返済できない場合は、役員の退職金を貸付金の返済に充てることも方法の1つです。

しかし当然ながら退職金は減ってしまいますし、その役員が実質的に会社の経営を行っていた場合は、退職金が損金不算入になり、個人に所得税が発生します。

慎重に費用を考えた上で、役員を退職しましょう。

役員貸付金精算プログラムを利用する

役員貸付金の返済が困難である場合は、役員貸付金精算プログラムを利用するのもオススメです。

役員貸付金精算プログラムとは保険会社に債権を譲渡することで、役員貸付金を生命保険積立金に変える方法を指します。

保険会社によって多少の差異はありますが、大体は以下の流れになるでしょう。

1. 取締役会で役員貸付金の追認と債務弁済契約を結ぶ
2. 役員が所属する法人とファイナンス会社の間で債権譲渡契約を結ぶ
3. 債権譲渡契約による代金で法人が生命保険に加入する
4. ファイナンス会社と生命保険の間で質権設定契約を結ぶ
5. 役員がファイナンス会社へ返済を始める

役員貸付金精算プログラムは、役員・法人・ファイナンス会社・保険会社の四者で債権をぐるりと回しているイメージです。

なお役員貸付金精算プログラムを利用するにあたって、ファイナンス会社および保険会社の金融商品を利用する必要があるため、法人と役員の審査が行われる点には注意しましょう。

役員貸付金が問題になったケースを紹介!

先ほど説明した通り、役員貸付金があると金融機関の印象を下げ、融資が受けづらくなります。

ここからは役員貸付金が問題になったケースと、解決した方法を見ていきましょう。

【役員貸付金が問題になったケース】
A社の代表Xは接待費として多くの役員貸付金を計上していた。

しかし近年、業績の悪化に伴い運転資金融資を金融機関に相談したところ、役員貸付金を理由に断られてしまう。

【解決方法】
顧問税理士に相談したところ、融資を断られた原因は、役員貸付金の私的利用・法定利息外の利用の2点が問題と告げられる。

役員報酬からの定期的な返済が現実的なプランだったが、早急に運転資金の融資を受ける必要があったため、代表の自宅を担保に不動産担保ローンを利用。

また業績悪化の原因が法人借入による債務であったため、代表者個人名義での借り換えを実施。

1年後には役員貸付金が全て解消され、金融機関からの運転資金の融資に成功。

このケースでは代表者個人の資産を売却することで、役員貸付金の解消に繋がっています。

しかし接待費用や法人借入額の見直しが早くに行われていれば、資金繰りに困ることもなかったはずです。

役員貸付金を解消する際には、貸付金の精算と共に根本的な原因を突き止め、改善する必要があると言えるでしょう。

役員貸付金はデメリットが多い!緊急時の利用にしておこう!

このページでは役員貸付金についてのメリットやデメリット、解消の方法などを解説してきました。

役員貸付金は役員報酬とは違い自由にお金を会社から役員へ動かすことができますが、金融機関の印象が悪くなり、後に会社や役員個人へ大きな税負担がかかる可能性があります。

役員貸付金を利用するのは緊急時のみにしておきましょう!